口を尖らせて睨む。瑠璃菜のことも〝螺旋髪〟だったし、人の名前覚えるのが苦手なのか。自分の名前は、スペシャル長いくせに。
「綺麗か? いや、ああいうのは、綺麗って言わねえぞ。美しさっていうのは、もっと違うもんだ。俺が綺麗だと思う女は、いつも身近にいるヤツだけだぞ」
「身近にいる人?」
「今まで会った中で、綺麗だと思ったのは、ソイツだけだぞ」
頬杖ついたまま、真面目な表情で言う。
そういえば、普段の仕事は女神の護衛だったっけ。
「そうでした。アクマ天使は、女神様が美の基準だもんね」
そんなの誰も敵わない。
どれだけ理想が高いんだ。あの香奈が綺麗じゃないなら、私なんて土の中から掘り出したばかりの、ジャガイモみたいなものなんだ。
あ……我ながらに例えが秀逸過ぎて、へこんできた……。
「おい。何へこんでんだ。ワケ分かんねぇヤツだな。まあいい。そんなことよりさっさとやれ。ほら、開始」
「んもうっ、分かってるよ」
シャーペンを握り直して問題に挑む。
「出来た! ね、どう?」
やった! 時間はぴったり一分前だ。間に合った!