こんな口も性格も悪い、危ない天使なんている筈がない。絶対アクマだ。
「ちっ、天使〝様〟だ」
外人は〝様〟のところを強調して、すぅっと目を細めて私を睨んだ。
嘘だ。こんなのおかしい。絶対現実じゃない。
ああ神様。これからは嫌いなピーマンだって食べます。ちゃんと勉強します。わがままも言いません。
だから、早く眠りから目覚めさせてください!
必死に祈り、目を瞑る。そうだ。これは、夢だ。夢なんだ。
「おいっ、お前寝るな。無視すんな。どうあがいても助手は決定だぞ。観念しろ」
「そんなの、知らないもん!」
「ふん、まあいい。俺は、アルラレイクリラジーンリクトールバトラハルクジークハリスオンだ。お前も名乗れ」
名前長過ぎっ。というか、名前なんて教えたくない!
口を貝のように閉じていると、外人はとんでもない迫力の声で脅してきた。
「名を言わねぇと、まんま落とすぞ」
「ひえぇっ、そんな……本気?」
「……試すか?」
そう言ってふっと腕を緩めた。瞬間腕の中から零れ落ちそうになって、全身の毛が逆立つ。
「いや、待って! 言います、言いますから! し……新藤朱里、です」