だんだん懐かしい場所が見えてきた。つい一年前まで、週に四回は見ていた看板がある。
近隣地域の剣道っ子御用達のお店、『藤松剣道防具店』。
昔からあるような、昭和の香り漂う木造の外観。ちっとも綺麗じゃないけれど、いいものが安く揃うと評判のお店だ。
その防具店の隣には、これまた古い木造建ての剣道場がある。防具店が道場主の『藤松剣友会』。
私が生まれるずっと前からあり、パパもここで剣道を習ったんだ。
開け放たれた窓からは、竹刀が打ち合う音と床を踏みならす音、それに威勢のいいかけ声が聞こえてくる。
「わあ。今、練習してるんだ。今の時間なら、ちびっこたちと藤松のおじいちゃん先生かな」
立ち止まっていると、少し前を歩いていたアクマ天使が戻ってきた。
「お前、ここ知ってんのか」
「うん。ここで剣道習ったんだよ」
パパに手を引かれて来たのは、小学校に入ったばかりのときだった。大きいお兄ちゃんやお姉ちゃんが練習していて、その後見せてくれた試合稽古がすごくかっこよくて、胸がドキドキしてワクワクしたのを覚えている。
『すご~い。ね、パパ、すごいね! カッコイイ!』