ハッ! しまった。
慌てて口を押さえる。思わず大きな声になっちゃった。ママがびっくりしている。早く笑わなくちゃ。
「ゴメンね、大きな声出して。あのね、今の高校好きなの。友達いっぱいできたし、楽しいんだ。夏休みだってみんなで遊びにいく約束してるし。あ、行っていいでしょ?」
「……そうね、近場なら良いわ。そう、高校生活は、充実してるのね?」
「うん、すっごく。あ、それより、明後日の三者面談頼むよ? あんまり遅くならないでね。先生に迷惑かけちゃう」
「分かった。時間に間に合うよう急いで行くから」
「絶対だよ。あ、食べよ食べよ。お腹すいちゃった。いただきまーす! う~ん、美味しっ。ママ、このカラアゲ最高に美味しいよ!」
「そう? これ、患者さんのおすすめレシピなの。本当だ、美味しいね。明日お礼を言っておかなくちゃ」
よかった。沈んでいたけれど、笑ってくれている。二人きりの家族だもん。ママの暗い顔なんて見たくない。
だから、これでいいんだ。