真帆りんは、一緒の道場で育った幼なじみだ。辛い練習をいつも励まし合って、でも一番のライバルだった子。

 剣道の特待で高校に行ってるけれど、そっか、優勝かぁ、相変わらずすごいな。興奮してはしゃいじゃう。だって、ほんとにすごいことだもん!

 きゃあきゃあ言っていると、カチャカチャと晩御飯の準備をするママの手がピタッと止まった。覗き込むと、哀しそうな顔をしている。

「ママ、どうしたの?」

「朱里。やっぱり、特待の私立に行きたかった? ママね、言われちゃったの。『朱里ちゃんが来ていたら、真帆も勝てなかったかもしれないわ。朱里ちゃん、本当に勿体無いわよ。今からでも遅くないわよ、転入させてもらったら? 朱里ちゃんなら出来るわよ。先生方も残念がってたもの』って。行きたいなら、ママ」

「そんなことないよ。だって、剣道は中学までって言ったでしょ? それに、今からじゃもう遅いよ。体がなまってるし」

 神社で素振りしている程度じゃ、強豪校の練習についていけない。

「それならいいけど。もし朱里がママのこと気にしてるんだったら――」

「いいの!! 全然関係ないから!」