[正しい夏休みの過ごし方]

 それから教会に戻って夏休みの課題をしていたら、あっという間に時間が経ち、家まで送ってもらった。この時間、ママはまだ帰ってきていないので、家の中は真っ暗だ。

「ただいまー!」

 ひっそりした家の中は物音がしないし、返事する人もいない。いつも通り、耳を澄ませて確認してから、玄関を上がる。

 これはパパに言われていることで、幼い頃からの習慣になっている。そうしないと、靴を脱いじゃいけない。誰が潜んでいるか分からないから。心配性なパパの言い付けだ。

 リビングと台所の電気を点けて回って、そのまま仏間に向かう。

「パパ、ただいま」

 電気を点けて座ると、いつも変わらない笑顔が迎えてくれる。〝朱里、おかえり!〟と。

「あのね、今日は一個見つけたんだ。今日のはね『嫉』だったの。憑かれた子は私と同じくらいの歳で、何があったのかは分かんないけど、嫉妬心がすごーく強かったんだって。でね、その子、どこもかしこも真っ黒で悪魔みたいですんごい怖かったんだ。だけど、勇気出して頑張っちゃった。だって、勇敢なパパの娘だもんね。ね、褒めてくれるでしょ?」

〝よく頑張ったなあ!〟

 いつものように目を瞑ると、大きな手で、頭をわしわし撫でてくれたのを思い出す。

「パパ――」

 すると、急に、アクマ天使の手がポンと頭に浮かんだ。

「ちょ、何で今思い出すの?」

 ヤダヤダ、傷を癒してくれた時は確かに優しく感じたけれど、アイツのは違う! ついさっきの事だったから印象深いんだ。そうでなきゃ、パパ以外の人の手なんて思い出さない。というか、思い出したくない。

 でも、アクマ天使のくせに、すごーく、あたたかい手だったな。