「ん? どうしたの。もう行こうよ。待ってたんでしょ?」
「アカリ……」
「ひゃあっ」
アクマ天使の大きな手の平が、私の左頬をそっと触った。
「悪いな」
いつもと違う、すごく優しい目をしている。手も、まるでいたわるように触れていて、胸がトクンと鳴った。
「な、謝るなんて、珍しいじゃない」
「お前のここ、怪我してんぞ」
言われて初めて、頬にぴりっと痛みを感じた。痛みを自覚すると、腕も足もひりひりする。
「いたっ。やだ、こんなに怪我してたの?」
あの時破壊された地面の破片が当たったんだ。いくつも傷ができていて血が滲み出ている。夢中になっていて気がつかなかった。ママに何て言い訳しよう。
「ちょっとの間、目を瞑ってじっとしてろ。言っとくが、俺は下手だぞ。我慢しろよ」
「下手?」
「得意じゃねぇってことだ」
「んあ……」
アクマ天使の手の平から光が出ている。それが顔に近づいてきたから、眩しくてすぐに目を瞑った。
頬、腕、足。ゆっくり順番に、ほんわりとした熱を感じる。
下手なんて、そんなことない。すごく気持が良くて、寝ちゃいそうになる。美容院でシャンプーしてもらっている感覚に似ている。