「ああ、泣くなっつーの。アイツの腹の蚯蚓腫れは消さずに残す! それでいいだろうが!」

 アクマ天使が髪をガシガシと掻きながら、イライラとして言う。

「え? 痕を残せるの?」

「簡単だ。消えるまで、暫くは原因不明の痣で悩むだろ。それで良しとしとけ。ウーヴリエ」

「んっ、眩しっ」

 アクマ天使の手の平から光りが溢れ出て、地上がまったく見えなくなった。しばらくして光が薄れ始めると、木が見えはじめてバスが現れ、人が立っているのが見えた。

 野球部の子達は元気に多目的広場に向かっている。へこんでボロボロだったバットは、箱の中にあるし、破壊された地面も平らだ。

 呆然としている黒人間以外は、何事もなかったように動いている。

「よし、こっから離れるぞ」

「うん……」

 だんだん遠のいて行く地上で、黒人間がのろのろと歩くのが見えた。

「ね、教会に帰る前に寄って欲しいところがあるの」

「遠くは駄目だぞ」

「うん。遠くないよ、山の上神社だもん。ちょっと、用があるんだ」