「お待たせ致しました、ハイビスカスティーでございます。お茶請けに、クッキーもどうぞ」



 透明のティーカップに入った赤く透き通った液体が、ほかほかと湯気を立てている。

 花のような爽やかで甘みのある香りがするが、味は結構すっぱい。

 その証拠に、香りで少し油断していたらしいカイは、少し口に含んだところ顔をしかめて口元を拭った。



「……想像以上の酸味だ」


「大丈夫ですか?砂糖を入れます?」


「いや、少し驚いたがそのままで大丈夫だ」



 そう言った彼は一枚クッキーに手を伸ばした後、再びティーカップに口を付ける。驚きはしたが、嫌いな味というわけではないようだ。

 アリシアは安心して、自分も赤いハイビスカスティーを一口飲んだ。

 口の中に広がる酸味は、確かに初めて飲む人は驚くかもしれないが、アリシアは好きだ。同じように酸味の強いローズヒップティーとブレンドしたものをよく飲んでいる。



「カイ様、今日はありがとうございます。とても楽しかったです」



 リラックスした気分になってきたアリシアは、ふと思い出して改めてお礼の言葉を口にした。



「それは良かった!こちらの城に来てからの貴女は、どうも笑顔が少ない気がして気がかりだったのだが、今日の様子を見て安心した!」