船内を歩き回ればどこかで誰かと出会うはずだった。


なんせこの船は2,000人の乗客を乗せることができ、スタッフも1000人を超えているのだ。


それなのに、俺たちが客室からデッキへと移動している間、誰にも出会う事がなかった。


それだけでも十分に異様な雰囲気が漂っている。


こんな異常事態が発生しているというのに、乗組員の姿も声も聞こえて来ないなんておかしすぎる。


「この船、広すぎだろ」


息を切らしながらそう言ったのは2年5組の片岡浩成(カタオカ コウセイ)だった。


「なんだよ浩成、このくらいで」


そう言うと、浩成は自分の腹をさすり「晩飯を食い過ぎたんだ」と、しかめっ面をして言った。