そう言ってスマホを取り出す結愛ちゃん。
見せてくれたスマホの画面には、サラサラ黒髪のかっこいい男の子が写っていた。
…なんか誰かに似てるなぁ。
「わぁかっこいいね!」
「でしょ?この子私の推しで──…」
キラキラの笑顔でその男の子について語ろうとしだした結愛ちゃん。
次の瞬間、彼女の手からするりとスマホが抜きとられた。
「おはよ結愛」
バッと結愛ちゃんが顔を上げ、たちまち頬を赤く染めあげる。
嬉しそうに微笑んだ結愛ちゃんはきっと、世界で1番可愛かったはずだ。
「おはよう晴斗(ハルト)!」
──皆木晴斗くん。
結愛ちゃんがずっと片想いしていた相手で、今はもう結愛ちゃんのカレシだ。
さらりと皆木くんの黒髪が揺れるのを見て、さっき結愛ちゃんが好きだと言っていたゲームキャラを思い出す。
あの子、皆木くんに似てたんだ。
「澤田(サワダ)さんもおはよう」
「ぇ、あっおはよう」
急に声をかけられて、慌てて返事をする。
女の子相手だったらもっと自然に返せるんだけどなぁ。性別の壁って大きい。
「てか誰がかっこいいって言ってたの?」
さっきの話が聞こえていたのか、皆木くんが不機嫌そうに首を傾げる。
結愛ちゃんはパチリと目を瞬いて、それからふっと吹き出した。
「ゲームのキャラ!何なに嫉妬?早すぎない?」
「うるさいな、悪いかよ」
付き合いたてホヤホヤの2人を邪魔しちゃ悪いと思い、そっと席を立つ。
結愛ちゃんにトイレ行ってくるねと伝え、私はスマホを片手に教室を出た。