横並びで台所に並んでいた私たち

織原真琴が少し顔を上げた

「…ありがとー」

目は伏せられていたけれど

少し尖らせた口から小さくその言葉が出た

「どういたしまして!」


少しずつだけど

私たちの距離が詰められていく

そんな気がして、思わず思いきり笑った


「…ねぇ」



「なんですか?」

「…あんたって俺のことなんて呼んでる?」

…ふぁい?

急に話変わりましたね


「呼び名ですか」

織原真琴
フルネームで呼び捨てです。なんて言えないな

「お、織原くん…ですかね」

なんだなんだ急に

「…それやめた方がいいんじゃね」

え"
なんで

「だってここ織原家だし。たまに来る母さんも織原だし」

は、はあ
まあそうだけど

じゃあなんと呼べと?

同居人?
織原真琴?

あ、名前?

「名前で呼んでいいんですか?」

「…別に」

別にってのは…

別にいいってこと?
別にそうは言ってないってこと?

語彙力っ!
もーちょっとボキャブラリー使ってくれ!


私のとぼけた顔から考えを汲み取ったのか、再び口を開く同居人

「好きに呼べばいい」

…じゃあ織原真琴で
とも言えず

「…じゃ、じゃあ真琴くんって呼びますね」

「…」


少しの間を置いて

「ん」

そっけない返事が返ってきた

なんだよー急に

呼び名なんてこだわるようなキャラじゃないでしょうが