学校の近くのカフェで待ち合わせをしている

軽い足取りでそこへ向かう…途中


「梓!」



「梓…いた」

「え、る、ルイくん?」

「…梓」

肩で息をしているのはルイくん

走ってきたの?


思わず少し距離を取る

「…佳奈から電話きた…梓、フランスには行かないって」

ああ

「うん行かないよ。大切なものがここにたくさんあるの」

「…うん。そうみたいだね。それに多分梓が行くって言っても意地でも引き止めようとする人がいるでしょ」

それって…

「ふふっ、そうだね」

私の笑いにつられたのかルイくんもニッと笑った


「…梓、改めて色々とごめん。梓のこと考えずに先走っちゃったことも…その前のことも」

…うん

「梓に言われた通り、俺もっとちゃんと自分と向き合ってみる。日本の実家にも行ってみる」

うん

「瑠維っていう素敵な名前に似合うように、頑張ってみるよ」

「うん、瑠維くんならできるよ」


きっとできる

お母さんとおばあちゃんが大切にしてるんだもん

あなたにはきっと素敵な価値がある


「僕はまたしばらくしたらフランスに戻るけど、梓は本当に来なくていいんだね?」

「行かない。私はここにいる」

はっきりと答えた

「…そっか。キッパリフラれちゃったな」

ルイくんが少し切なげに笑った


「…ルイくん」

「ん?」

「お母さんを、よろしくね」

「……うん!」