「……」

「……」

沈黙が広がる

真琴くんは早口に捲し立てたせいか珍しく肩で息をしている


「行くぞ梓」

「…」

何も言わず、何もできず

決まり悪そうに俯くルイくんを残して
ただ真琴くんに腕を引かれて進む


家を出て、学校を通り過ぎ、いつもの帰り道

ずっと無言で、ただいつもよりちょっと強引な真琴くんに少し駆け足でついていく


「…梓は」



人のいない道に出た時

歩くのをやめないまま、真琴くんが唐突に口を開いた

「…俺が何も言わなかったら、なんて答えるつもりだった?」

真琴くんが
何も言わなかったら…?


…きっと私は

「…分かった、って言ったと思う」


そこで初めて、真琴くんの足が止まった

ぶつかりそうになってなんとか踏みとどまる

「…お母さんのためなら、大事にしてきた会社のためなら…分かったって言ったと思う」

スル

…真琴くんが掴んでいた私の手が、その大きな手の中から抜けた

「…そう、か」