「真琴くん?」

「……梓の…首に跡がついてる」

「跡?」

「……キスマークってやつ」

梓が自分の首をさする


あ"ーくそ

もう三発くらい殴っとけばよかった


「…ルイくんの?」



「…うん」

「これって消えないの?」

「内出血だからすぐには消えない」

「…そっか」


服の首元を緩め、斜め下に目を落とす梓

ブチブチと頭の中でいろんな線が切れてる気がするけど

ただ目の前にいる梓を大切にしたいという思いだけでなんとか理性を保…とうとする

それなのに梓は無防備に胸元まで緩めやがる


「…梓」

「…ん?」

「消せはしないけど…上書きならできる」

「上書き…?」

梓の泣き跡の残った目が俺を見る

「上書き…って同じことするってこと?」

「…その跡が残ってるのが嫌ならね」


なんて…
ただの口実。絆創膏かなんかで隠せば済む話

でも…俺が無理

あいつの跡が残った梓を見ていられない

だから卑怯だと分かっていながら無知な梓にそんな言葉をかける


……いや、何言ってんだ俺

残り少ない理性でなんとか自我を取り戻す

「…なんてね…いつかは消えるし、絆創膏とかで隠せば…」


「真琴くん」



「やって」

………は


「上書き。思い出したくないから…だから」