走った

学校からまっすぐ、自分の家へ向かう道


『真琴くんがいてくれて、よかった』


梓はきっといる

俺達の家に、帰ろうとしてる

なんの根拠もないのにそう信じてやまない自分がいた


こんなに必死になれるくらい好きになったんだ

こんなにブチ切れるくらい誰にも渡したくない


早く梓を、早く…


!!


学校から家への帰路の途中

街頭だけが照らす薄暗い道

遠めだけど分かる

壁をつたいながら歩いてる一人の影


「梓!!」


そう叫んで走った

こんなにマジになって走ったことなんかないってくらいの力を出して


梓、梓、梓!

「梓!」


俺の声にゆっくり振り向いたのは紛れもなく大切な人

ずっと探していた人

誰にも渡したくない、俺の好きな人


「……ま、ことく」


手が届く距離になった瞬間、無理やり彼女の腕を引き寄せ、自分の胸の中に入れた

そのまま強く抱きしめる


「梓…っ…梓っ」

「……真琴く……ぅ…うわぁぁぁ!」

声をあげて泣いた

彼女の細い弱い手が俺の服を掴む


「ごめん梓……遅くなってごめん」


雨に濡れて冷たい体

梓は靴も履いてない


「うう…うっ」

「帰ろう梓」