「はぁ…はぁ…くそっ」

どれだけ走ったかわからない

「梓!」


ただ降る雨は強くなるばかりで夜が濃くなっていく

とにかく右往左往に走り回ったけど、梓が見つからない

何度電話をかけても出ない


いつのまにか学校の前まで来ていた

はぁはぁと息をしながらあたりを見回す


どこだ

冷静になって考えなきゃダメだ

でも心配やら不安やら怒りやら嫉妬やらで感情が無茶苦茶になってる


落ち着け、落ち着け織原真琴

一刻も早く梓を見つけるんだ


くそ…わからない

梓のこと、全然知らない

落ち込んだ時、苦しい時、誰に頼るのか

どこへ行くのか、どんな表情をするの…か


いや…待て

知ってる


あの時、梓が泣いていた時

声を押し殺して泣くこと、自分には似合わないからって誰にも甘えようとしないこと

それでも…俺の前で自分の弱いところを曝け出してくれたこと


梓が、苦しい時、どこで泣くのか

誰に頼るのか……


「俺だ…」