俺の問いかけにフランス人の顔が歪んだ

「……ちょっと…手を、出したら…」

…は?

「…我慢できなくて…梓に…その、嫌がってるのは分かってたけど…でも」


頭の中が真っ白になった




ドゴッ!


鈍い音が鳴る

咄嗟に、俺はこいつを殴り飛ばした


「お前…梓に何をした」

「……」

「何したって聞いてんだよ!!」

出したことのないようなデカいがなり声

夜の雨の街に自分の声がこだまする


激しく降り始めた雨に打たれながら尻餅をついたそいつは

片目に前髪がかかった状態で口を開く

「…押し倒した…ちょっと触った」



「キスしようとしたら…逃げられて、追いかけたけど」


「くそっ」

それ以上話は聞かず、本能的に雨の道を走り出した

「梓!」


どこにいる!

梓!


ぎりっと唇を噛み、拳を強く握る

押し倒した?触った?キスしようとした?


ふざけんな

ふざけんなっ!


「くっそ!!」

自分の思わぬ大声が響く


「梓!梓!どこだ!」


殴り足りない、この有り余る怒りをどこにぶつければ良いのかわからない


でも…

今はとにかく梓を探さなきゃ

見つけるんだ

あいつより先に

俺が梓を


「梓!」