「なぁ、そう言えば、さっきから気になってたんだけど、桜が話してた俺みたいなやつってのはこの人?」
「そうだよ!」
電話で彼のことを話したことはあったけど、2人は初めて麗央と会うんだった。
「初めまして。俺の名前は」
「知ってるよ。確か、りくと美咲さんだっけ?」
「そうです! よく名前分かりましたね」
と感心する美咲。
「‥‥‥なんで、俺だけ呼び捨てなんだよ」
りくのぼやきに麗央はさらっと聞き流した。
「桜からよく話は聞いてたから。大体のことは知ってるよ。とくに、キミのことはね」
そう言って、麗央はりくを睨みつけた。
「ちょっと、麗央‥‥‥」
そんな目で見たら、りくが怒っちゃいそう。
「おい、桜!」
やっぱり、怒った!
「こいつになんの話してたんだよ? まさか、俺の悪口とか言ってないだろうね!?」
「そんなの言ってないよ!」
昔、好きだった人の悪口を言ったことないし、言うわけがない。
まして、初恋のキミに。
でも、彼は私を疑うように顔を覗き込んでくる。
「本当かな〜!?」
「だから、本当なんだってば!」
そう返すのに必死だ。
「怪しい‥‥‥」
あまり納得してない様子のりくだったが、それ以上は言ってこなかった。
少しほっとしたものの、私は彼に伝えようと思っていた言葉をまだ言えてないことに気づく。