徹さんに抱えられたまま部屋に入った。

「お願い降ろして」

カーディガンで押さえたとは言え私は汚物でまみれてしまって、気をつけないと徹さんまで汚してしまいそう。

それでも、
「ジッとしてろ」
一喝されれば、黙るしかない。


玄関から廊下を通りリビングに入って、やっとソファーに降ろしてくれた。

「待ってろ、水と着替えを持ってくるから」
私から離れ荷物を取りに行こうとする徹さん。

とは言え、こんな状態でジッとなんてしていられるはずもなく、私は体を起こし床に足を降ろす。

「バカ、寝てろ」

徹さんがソファーに戻そうとするけれど、

「離して、汚れるから来ないで」
力任せに押し返す。

こんな醜態は見せたくない。
出来ることなら今すぐここから消えてなくなりたい。

「いいいから動くな。言うこと聞かないと、病院へ連れて行くぞ。そうすればすぐに陣の耳にも入る。それでもいいのか?」

私の頬に手を当て、ジッと睨まれた。

「イヤ、です」

それは困る。
でも、今のこの状況は惨め過ぎる。

「医者ならわかるだろう。具合の悪いときは誰にでもあるんだ。だから、今は素直に甘えていろ。こんな状態のお前を放り出せるほど俺は鬼じゃない」

「徹さん」

「ほら、カーディガンを脱ごう」
「・・・うん」

徹さんに体を支えてもらい汚れてしまったカーディガンを脱ぐ。
幸い他に汚れはなく、部屋も徹さんも汚さずにすんだ。

「俺は車から荷物をとってくるから。念のためシャワーは朝にして、パジャマに着替えておいて」

そう言うとゲストルームに置いていたパジャマを持ってきてくれて、また部屋を出て行った。