カチャッ。

無言のままマンションの駐車場まで帰ってきた私と徹さん。
車のエンジンが止るとともに私はシートベルトを外した。

バタンッ。

ドアを閉める音を気にすることもなく、車から降りる。

本来なら『ありがとうございました』の一言でも言うできなんだろうけれど、今の私はそんな気分じゃない。

大股で駐車場の出口に向かいながら、心の中で呟く。

一体何なのよ。
止めてって言ってるじゃない。
私は1人で行くって言っているのに、完全無視なんて酷くない?
そりゃあ2日間も泊めてもらって、今日だってせっかくのお休みを潰してしまって申し訳ないとは思うけれど、それでも

「オイッ」
いつの間にか追ってきていた徹さんに後ろから腕を掴まれた。

「何よっ」
掴まれた手を振り払いながら足を止めると、徹さんの険しい表情が目に入る。

嘘。
これは、怒ってる?
それも、かなり激しくご立腹の様子。

「どこへ行く気だ?」
「どこって、もう少し不動産屋を回りたいのっ」

どうしても今日中のアパートを決めたい。
研修医なんて激務で次にいつ休みが取れるかわからないんだから、出来ることは無理をしてでも進めたい。

「お前、バカか?」
「はあ?」

いくらお世話になっているとは言え、あまりの言葉にポカンと口が開いた。

「帰るぞ」

私の反応など無視して、徹さんは腕を引きマンションの入り口へ向かおうとする。

え、ヤダ、
「ちょ、ちょっと」
必死にもがき抵抗した。

それでも徹さんの腕が離れることはない。
それどころか、両肩をガッチリと掴まれてしまった。