本当なら松本みたいに大学生活を満喫したい。
 しかしバイトをしないと食べていけないし
苦学生の辛いところだ。

 「何だ~ならまた今度にするか。最近
知り合った奴なんだけどさ。すげぇイケメンなのに
 面白い奴だから立花にも紹介したかったのに」

「そうなのか?ごめん……また今度」

 俺は、苦笑いしながら謝った。本当にいい奴だな。
知り合った友人をわざわざ俺にも紹介してくれるなんて
 でも、悪いけどバイトを優先しないといけない。
特に今は、重要な役回りをしている。
 何とかして情報を探り入れて神崎さんに伝えないと。

 俺は、大学が終わるのを待ってから急いで
キャバクラ『アイリス』の方に向かった。
 今回は、こちらを中心なので喫茶店は行かなくてもいいらしい。
 もちろん給料は、特別手当てとして貰えるが。

店に入ると制服に着替えて駅前で呼び込みをする。
 これも新人ボーイの仕事らしい。
うぅっ……店の中で働きたいのに。

1時間すると交代になり俺は、店の方に戻れた。
 やっと……接客の方が出来る。
裏口から入ろうと向かうと……あ、あれは……!!
 入り口の方で篠田正信らしき人物を見つけた。
慌ててポケットから写真を取り出した。
 瀬戸さんから貰った篠田の写真だ。間違いない。
それにマヤさんって人と同伴している。

 やっぱり篠田とマヤは、繋がりが合ったんだ。
なら赤薔薇会の関係者は……マヤって女性か?
 俺は、慌てて裏口に回るとその事を神崎さんに知らせた。

 するとそのまま情報を探れと指示が出された。
俺は、仕方がなくボーイとして接触を試みることに。
 篠田がボトルを注文してきたので持って行く。
 聞き耳を立てながらテーブルに置くと何やら
楽しそうにマヤさんと話をしていた。

「もう……最近忙しいの?
 なかなか店に来てくれなかったからマヤ寂しかった。
今日は、閉店まで居てくれるんでしょ?」

「もちろんさ。マヤのために高い酒も入れてやる。
 そうだ……ボーイ。ロンペリも持ってこい。
金ならいくらでもあるからな」

「キャアッ~篠田さん太っ腹。大好き」

店の中で1番高い酒を持って来いと言う篠田だった。
 それに対してマヤさんも大はしゃぎ。
暴力団ってそんなに儲かるのか?いやいや。
 そんなはずはない。やっぱり怪しいぞ……これは。

 俺は、警戒をしながらも頭を下げると
言われた通りにドンペリを持って行った。
 その後もつまみや別の酒もじゃんじゃん頼む始末。
どう考えても不自然な盛り上がり方だった。