しばらく抱き締めた後。部屋に入る。
 神崎さんは、落ち着くようにエレナちゃんに
温かいカフェオレを作ってくれた。

「これを飲むと少しは、ラクになるよ」

「ありがとうございます……」

エレナちゃんは、悲しそうにお礼を言った。
 そしてカフェオレに口をつけた。
俺は、それを見ながら複雑な気持ちになる。
 傷心したエレナちゃんを見るのが辛い。

 「エレナちゃん。気持ちを考えると辛いだろうけど
聞いてほしい。伊藤さんは、他殺だ!
 しかも特種な麻薬を使い自殺のように殺された」

一番言いにくいことを神崎さんが代わりに伝えてくれた。
 それを聞いたエレナちゃんは、目を大きく見開き
驚いた表情をするとすぐに涙を流していた。

「何で……伊藤さんが?彼は、いい人よ。
 誰かに恨まれるような人じゃないわ……それに
麻薬なんてやる人じゃない!!」

「落ち着いて。勝手な逆恨みってこともある。
 人は、些細なことでも恨むこともあったりする。
 もちろん。それは、許されることではないし
必ず犯人を見つける。
 しかし、そのためには証拠や動機を見つける必要がある。
エレナちゃん……何か伊藤さんが変わった様子とかなかった?」

「……変わった様子?」

 エレナちゃんは、涙を拭きながら考える。
するとあることを呟き出した。

 「そういえば伊藤さん。最近田辺さんに薦められて
アロマを使うようになったかしら?
 田辺さんとは、仲が良くてたまに飲みに行っていたから
 それで自宅に行った時にいくつかアロマの道具を
貸してくれたんですって。その花の香りが
凄くいい匂いだからって私にも薦めてくれたんだけど
 あいにく同じ匂いのが何処のお店にも無くて
私は、まだ嗅いでいないのよね」

 花の香りのアロマ!?
その言葉を聞いた時“華の雫”が頭に浮かんだ。
 確か花の香りの成分がするってリカコさんが言っていたぞ!

「なるほどな。そのアロマに“華の雫”が
 仕込まれていた可能性があるな。同じ花の香りだし
それに麻薬は、嗅ぐだけでも中毒性になる効果がある」

 神崎さんも同じ考えだった。
じゃあ、犯人は田辺さんじゃあ!?