「俺は、アシスタントの菊池と一緒でスタジオに。
 途中で、電話をしに離れましたが3分もかかりませんでした」

 それに対しては、菊池さんも同意見だった。
他の複数のスタッフもそう証言している。
 次に二階堂ユミカだ。

「私は、その時間帯の少し前に
 由那と沙耶香と一緒にBスタジオに行ったわ。
ちょっと電話しにも行ったけど私も3分もかからなかったわ。
 それに別に変わった様子無かったけど…ねぇ?」

「えぇ、全然気づかなかったわ」

 同じモデルの由那ちゃんと沙耶香ちゃんも同意見だった。
皆にアリバイがあった。
 AスタジオからBスタジオに行くには、階段か
エレベーターで下りていかないとならない。
 事件現場の男子トイレは、人も通るし周りに聞いても
変わった様子は、無かったと答えてきた。

 だとしたら、一体誰が?
部外者が伊藤さんを殺したと言うのか?
 こういう場合は、よく身近な人が犯人だったりするが
俺には、さっぱり分からなかった。
 チラッと神崎さんを見ると何やら考え込んでいた。

 するとエレナちゃんが目を覚ましたと聞いて
俺以外で神崎さんとリカコさんが慌てて
 医務室に向かった。エレナちゃん大丈夫だろうか?

 心配になりながらも着くと医務室の中に入ったのだが
泣き叫びながら伊藤さんの名を呼んでいた。

「伊藤さんは!?伊藤さんは、どうなったの?」

「エレナちゃん。落ち着いて!!」

 泣き叫ぶエレナちゃんをリカコさんは、必死に
抱きついてなだめようとしてくれた。
 俺は、その姿を見て胸が痛んだ。これは辛いはずだ。
 付き合っていた人が殺されたのだから普通は、
正気ではいられない……。
 エレナちゃんは、さらに泣き崩れていた。
 俺は、どうすることも出来ずにただ黙って
立ち尽くすことしかできなかった。

 しかし数日後。さらに思わない方向に起きてしまう。
解剖に回された伊藤さんの死の原因は、驚く内容だったからだ。

「えっ…自殺?何でですか!?」

 それを聞いたのは、神崎さんの経営している喫茶店で。
瀬戸さんが解剖の結果を教えに来てくれた。
 なのに……何で解剖結果が自殺なんだよ!?
その内容に納得かいかなかった。