あ、それより俺は、どうしたらいいんだ?
神崎さんが出て行ったから俺も出て行っていいのかな?
 オロオロしていると警視総監は、ため息を吐いていた。

「まったく……父が好きにさせてやれと言われたから
 好きにやらせていたが、困ったヤツだ。
君も大変だな?あの子のワガママに付き合わされて」

「あ、いえ……大丈夫です。慣れてますから
 あの……神崎さんは、喫茶店としても常連客に
評判もいいですし探偵としても実力は凄いです。
 だから……その……認めてあげてください」

この2人にどういうやり取りがあったのか分からないし
父と子のやり取りもよく分からないけど
 このままにしていいのだろうか?
親子に縁がない俺には、何だか気になってしまう。
 すると警視総監は、またため息を吐いていた。

「君は……彼に似ているな」

「えっ?彼……?」

誰のことだろうか?急にそう言われても……。
 俺は、首を傾げると警視総監は、クスッと笑っていたが。
その表情は、やっぱり神崎さんに似ている。

「……伊波亮(いざなみりょう)。あの子の元バディだ!
 悪いことは言わない。今のバイトは辞めなさい。
今の生活を大切にしたいのなら……」

伊波……亮?神崎さんの元バディ。
 その言葉は、どういう意味をするのか俺には、
分からなかった。しかし、のちにそれが
大きな意味になるとは……この時思ってもみなかった。

あれから警視総監室から出ると慌てて
 神崎さんを追いかけた。エレベーター近くで見つけるが
ドンッと大きな音を立てて壁を拳で叩いていた。
 「くそっ……」と悔しそうに声を出しながら

普段の冷静沈着な神崎さんではなかった。
 まるで怒り……いや憎しみに耐えている感じだった。
神崎さんにとって赤薔薇会とは、どんな因縁があるのだろうか?

足を踏み入れたらいけないのではないかと思うほど
 何だか悲痛な雰囲気になっていた。
警視総監が言った人物……伊波亮に関連しているのだろうか?
 俺は、どうしたらいいか分からなかった。

その日は、しばらく待って神崎さんと
 タクシーに乗って帰宅した。タクシーの中では、
ずっと神崎さんは、黙ったままだった。
 表情は、普通に戻っていたが何だかぼんやりと
考え事をしているように何も話してくれなかった。

次の日の朝。いつもの通りに大学に通うが
 PCウォッチからメールが入っていた。神崎さんからだ。
『今日は、臨時定休日で休む』と……。