立ち上がってこちらを見ている人物が
現在の警視総監なのだが、背が高くスラッとした体型。
 そして白髪交じりの髪に白いヒゲ。
しかし顔立ちが神崎さんを老けさせた感じで
よく似ているではないか……。えっ……あれ?

すると警視総監は、こちらをジロッと
睨み付けるように見てきた。思わずビクッと反応する。

「……随分と派手にやっているそうではないか?桃哉」

えっ……?桃哉……?
 すると隣に居た神崎さんは、フッと笑った。

「別に……派手にやっているつもりはないのですけどね。父さん」

 と、父さん!?えっ……じゃあ、もしかして
警視総監って神崎さんのお父さん!?
 意外過ぎる真実に俺は、言葉にならなかった。

神崎さんは、元刑事なのは聞いていたけど
 まさか……警視総監の息子さんだったなんて初耳だ。
ということは、凄いお坊ちゃんってことになるじゃないか。

 あ、だからか。あのお店が不定期に営業したり
神崎さんのお金の使い方が凄いのにやっていけるわけが!
 警視総監の御曹司なら納得だ。
何故か俺は、冷静に分析を始めた。

「それよりどういうことですか?父さん。
 何故俺だけではなく、立花まで?
彼は、ただのバイト。責任は、店長の俺にありますし
 わざわざここまで連れて来る必要はないですよね?」

神崎さんが珍しく怒ったように言ってくれた。
 バイトの俺が、ここに呼ばれたことに納得がいかないようだ。
しかし警視総監は、顔色1つ変えない。

「バイト?確かに彼は、お前が雇ったバイトだ。
 だが、しかし随分とそのバイトの彼に
無茶苦茶な要求をしているそうではないか?
 潜入捜査といい……それは、我々の仕事で
彼にやらせるには荷が重いのではないのか?」

「……それは、そうですが。その分の給料も
上乗せしてあげています。それに……」

「それに……何だ?桃哉。お前もお前だ。
 いつまで喫茶店と探偵みたいなことをやっているんだ?
お前は、いずれ跡を継ぎ警視総監になる立場だ。
 そのために刑事になったはずだろう。
なのに辞めて……探偵なんかに。
 今すぐに辞めてまた刑事として戻れ。
口利きなら私がしておいてやるから」

「……嫌です。俺は、俺の道でアイツらを……。
 赤薔薇会を見つけ出して潰します。
絶対に辞めませんので……失礼します。立花行くぞ」

えっ……えぇっ!?
 神崎さんは、父親である警視総監に楯突いた。
そして話を中断させて部屋から出て行ってしまう。
 いつもの神崎さんじゃないほど気が立っていた。
お父さんと仲が悪いのかなぁ……?