朝食、着替え、と 朝の仕度を済ませ、家を出る。
携帯音楽プレーヤーにイヤホンを繋ぎながら、門の近くに、 日野 碧人(ひの あおと)の存在を確認した。
「糸(いと)、おはよっ」
朝から爽やかな笑顔。
ボクの幼なじみの碧人は、毎朝ボクを迎えにわざわざやって来る。
「おはよ…」
碧人の姿は、特に望んでいない。
ボクの手は自然と イヤホンを耳に押し込み、わざと前髪で目を隠していた。
「糸~、前髪 のばしてんの?前見えないと危なくない?」
音楽を流す前に話しかけられ、ボクは「別に」と そっけない返答をする。