手を繋いで 湖の回りを ゆっくり歩いて。

ボート乗り場で 悠樹は 足を止める。


「俺の 上手な オールさばきを 明日香に 見せてあげるね。」

悠樹は 先に ボートに乗ると

私の腕を引いて ボートに乗せてくれた。


不安定なボートに 足を捕られて

私が 「あっ。」と バランスを崩すと

悠樹は 私を そっと 抱き留める。


「危ないよ 明日香。2人で 溺れちゃうでしょう。」

「ごめんなさい…」


態勢が 整ったのに 悠樹は 私を 離さない。

本当は 私も ずっと 抱き締めていて ほしかったけど。


「ありがとうございます。」

そっと 悠樹の胸から 私は 離れた。


困った顔の私を 悠樹は クスッと笑って見つめて。


私は 幸せ過ぎて 胸が いっぱいで。

泣き出しそうな 叫び出しそうな

不安定な気持ちを 深呼吸して整えた。