階段を上りきってすぐの部屋の前に、彼はいた。

わたしの姿を確認した途端、ため息をついて目線を逸らされた。




「ま、待ってください!」


「……」




…… そんな目で見なくても。

あからさまに面倒臭そうな顔を向けられた。


そりゃあ、雪まみれでふらふらの女子高生なんて面倒極まりないことなんて分かってる。


でも、わたしに頼れるのはあなたしかいないんです。



だから、お願いします。




「家に、帰りたくないんです。バイト先とか住むところとか、教えてください。」




これでもかというほどに頭を下げた。

しっかり、わたしの気持ちが伝わるように。

届くように。


少しして聞こえて来たのは、扉の開閉音。



もう、部屋に入ってしまったみたい。

ことが終わった途端に、どこか客観視へと切り替わる自分がいて。


扉と希望には背を向けて、わたしは歩き出した。






__________「おい。」





「……え?」