「これ、どうした?」
腫れた足から顔を上げた桜井くんがわたしを見つめる。
なのにわたしは、凍ったかのように固まって。
「あ、…えっと」
しどろもどろになってしまうんだ。
何か言わないといけないって分かってるのに、桜井くんの表情からは何も汲み取れなくて、正解が分からないから。
そんなわたしに助け舟を出してくれたのは、隣の由利くんだった。
「動けないみたいだったから、俺が運んできただけだよ。」
「…悪い」
「ははっ、なんで。」
わたしは何も口を挟めず、ふたりの会話をぼんやり聞いていた。
──────そのとき。
わたしを襲う、突然の浮遊感。
首の後ろに回された手は、無雑作だし無遠慮だ。
お姫様抱っこ…を、されている。
……桜井くん。
「っ、え…?」
「運ぶ。手当てするから」