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「あの、本当にありがとう」
「どーいたしまして」
花火を見ていればあっという間にいつものアパートに着いてしまった。
由利くんは、階段を上れないわたしを気遣ってくれて、扉の前まで運んでくれた。
至れり尽くせりとはまさにこのこと。
「ごめんね、なにかお礼…」
「あー…まじで気にしないで」
「そんなっ、」
「さすが謙虚。ほんといいからね」
宥めるように頭に手を置かれてしまい「ね、」と再度言われれば、これ以上なにかを言うことはできなかった。
代わり、にしては随分ちっぽけだけどもう一度「ありがとう」と言う。
そんなわたしに、由利くんは満足そうにした。
そのとき、扉の奥から誰かの足音が聞こえてくるような…。
誰か、ってひとりしかいないけれど。
「……三浦」
「桜井くん…?」
ガチャリ、と開いた扉から顔を出したのは、当然桜井くん。