「かくかくしかじかあって───…」
──────ドーン!
「っえ…?」
続くはずの言葉を、思わず中断した。
さすがに2回も銃声となんて間違わない。
れっきとした花火の音だ。
「おー。綺麗だね」
「うん、綺麗だけど…。でもなんで?もう終わったはずじゃ…」
家のベランダから少しだけ見えた花火を思い出して言う。
「ああ、知らない?この祭りでは花火2回上がるんだよ。最初と最後に」
由利くんの答えに驚き。
わたしの知っている花火大会は、お祭りの最後に花火が打ち上げられるものだと思っていたから、こうゆう地域もあるんだなあって。
「2回も見れるなんていいね」
「そうだねー」
由利くんの背中で、夜空の花火を見上げる。
いま打ち上げられているのは、わたしがダントツで好きな花火だ。
錦冠菊(にしきかむろぎく)。