『アホが』
「うっ、」
嬉しいなんて思った次の瞬間には見透かしたかのような暴言だけど。
『お前のこと迎えに行けばいいわけ』
こんなこと言ってくれるくらいには優しい。
きっと飽きれられたのに。
スマホから聞こえてくる声は、やっぱりどうしても優しい。
でも、仮に迎えに来てもらうことになってもわたし自身がこの場所を理解出来てないんだから、合流なんて絶望的だ。
だから、
「大丈夫ですよ。帰れます。むしろ迎えに来てもらったら桜井くんが迷っちゃう」
『お前みたいに方向音痴じゃねえけど』
「ふふっ、ほんとに大丈夫ですよ」
『……気をつけろよ』
「もちろん」
最後は桜井くんが折れてくれて、通話ボタンを切った。
ふう、と一息つく。
──────と。
「いや、帰れるわけないでしょ。」
横から聞こえる声、由利くん。
「あ…、やっぱりそうですよね」
わたしは腫れ上がった足を見ながら、苦く笑った。