……しばらくその場から動けなくて。
周りの人達に助けを求めることも出来ないでいたわたし。
でも、そのとき。
──────「大丈夫?」
いつの間にか俯いていた視界に差し出された手のひら。
顔をあげればわたしの表情を覗き込むやけに整った顔の男の人。
「あ……、えっと怪我して」
「怪我?……あー、血出てるね」
「挫いてしまったみたいで、」
「手だけじゃ無理か。……ん、乗って」
「えっ、」
目の前で屈められた背中。
その上に乗るよう、促される。
「いや、そんな!」
「じゃあずっとここ座ってんの?」
「あ、」
「ほら」
躊躇いがちにだけれど、恐れ多くも肩に手をおかしてもらって、そのあとはあっという間におぶられてしまった。
そのまま歩き出してくれるこの人に、頭の上から言葉を発する。
「あの、すみません。一緒に来てた人達とか大丈夫でしたか?」
「うん。もう帰るとこだったから」