当てはないけれど、とりあえず歩こう。
どうしてさっき、あんなに心臓が痛くなっちゃったのかなあ…。
バクバクと破裂しそうになっていた左胸に手を当ててみるけれど、全く正常だった。
お祭り、というあまりない環境に心がびっくりしたのかもしれない。
もしくは、桜井くんの友達と話して緊張していたのかも。
それ以外の考えは、どれだけ頭を悩ませてみても出てこなかった。
──────ドン、!
「っ、わ!?」
勢いよく膝を地面に打ち付け、痛さに顔を歪める。
ボーッと考えながら歩いてたせいだ。
「おっと、ごめんねー!」
目の前にいる人に気づかず、ぶつかって転んでしまった。