「若葉くんと同じカフェで働いてます。市瀬 瑞季です」
「あっ、大西珠貴っす!全然珠貴って呼んでくれていいんで。瑞季さんは……大学生ですか?」
あぁー。
最悪最悪最悪。
だから嫌だったんだ。
気安くしたの名前で呼んでんじゃねーよ。
俺が呼べるようになったのついこの間だぞ。
ほんっとありえない。
こいつがいなきゃ、瑞季さんとふたりでバイト先まで向かえることに浮かれてたはずなのに。
「うん。そーだよ!ふたりの3個上かな〜」
「え〜20歳だ!可愛いっすね」
「おい、珠貴」
たしかに瑞季さんは可愛い。
死ぬほど可愛い。
けど、お前のそのやっすい『可愛い』と一緒にしないで欲しい。
「フハッ、珠貴くん『可愛い』が挨拶のタイプだ〜」
「え、そんなことないっすよ!まじで、瑞季さん可愛いっす。な、若葉」
「お前もう帰れよ」
ギッとこれまでにないぐらい珠貴のことを睨めば、
一瞬だけそのだらしない口をキュッとしてから再び口を開いた。
「……いや、帰んねぇ。俺も働くし!若葉のとこで!」
クッソ…。
こいつまじ……。