「おま……」
「あれ?若葉くん?」
っ?!
『お前と一緒にすんなよ』
そう言おうとした俺の声は、後ろからした声にかき消された。
ゆっくりと振り返る。
学校を出てから数分。
こんな風にバイト先に向かう道のりで会うのは、働き始めて半年のうち、3回目だと思う。
「瑞季さん……」
肩まである髪をいつものように後ろの方で団子にして一つに結んでいて。
ほんの少し眉毛が見えるぐらいの短めの前髪は顔の小さい彼女によく似合っていて。
彼女を見るなり、もう癖みたいに、心臓がトクンと跳ねた。
「あ、学校の友達?」
瑞季さんは、俺の隣にいる人物に気付いてそう聞いてきた。
最悪だ。
起こって欲しくないことが起こってしまった。
「あっ、いや、まぁ……」
曖昧に答えれば、瑞季さんはハッと顔を明るくして目線を珠貴に移した。