「おれに向かって言いかけたんだから、おれに言いたいことじゃないの?」

「言いたかったけど、言うのはハードルが高かったから、また今度!」

「また今度って、いつ? キスしたくなったら、紗奈ちゃんから言ってくれるの?」


ああ、もう、一生勝てないんだろうな。


いつまで経っても、答えられなそうなところ。


いつまで経っても、わたしがなれなそうなところ。


なれないほうが、まいにちしあわせなのかな、って、思ってしまっているところ。


なれてしまったら、いまのようなドキドキ感は、どこにいってしまうんだろう。考えているところ。


ぜんぶぜんぶ、見抜かれている、と思う。