「ちかくないよ、だってさ」


──橘、わかっているんでしょ。


わたしが、『いちゃいちゃしたいなあ、ちゅーしたいなあ』に対する言葉を、声にしようとしていること。


「キスより、遠い」

「〜っ、ばか!」


キスより遠くたって、ちかいもん。


橘、ずるい。


わたしの負けだ。勝てないよ。


顔を思いっきり逸らして、まだちかづいてこようとする橘のあごらへんに手をおき、ぐーっと押し返す。


ちかい、いまちかづかないで、ほんとうに!