「なぁに? 紗奈ちゃん」
急かすようでいて、ゆっくりな口調。
こてんと首をかしげられて、ええ! たぶんこいつ、自分の顔のつかいかたを理解していらっしゃる!
つかいかた、って表すのはなんかちがうかなと思った結果、謎に敬語つけちゃったよ、うん、でもまあいっか、気にしない!
いまいちばん気にすべきなのは、言いかけた文章を、どう処理するか。だ。
言うか、言わないで誤魔化すか。
たぶん、言わされるんだろうなあ……。
「教えて、紗奈ちゃん」
「えっ、まって、ちょっと、ちかいちかいちかい」
「ちかくないよ」
「ちかいって!」
顔がどんどん寄せられてきて、わたしは体をうしろへ反らせる。