恥ずかしい、って感情が、しあわせに塗り替えられていく。


「ふいうちは、よくないって……」


ぽつりと言った橘が、3秒目を閉じて、開けた。数えちゃったあたりが、ほんとう……わたしの想いって、相当らしい。


「行こう。待たせちゃう」


たった数十秒のできごと。


たった1回のふいうち。


小走りでふたりのもとへ急ぐ。


はやく。はやく。


ああそれから、顔が赤い理由にもしよう。


ほら、わたしって、運動不足だから。


橘の顔が赤い理由は──そこを聞かれてしまったら、どうしようもないけれど。


たぶん橘だったら、うまいことかわすんだろうな。


想像して、またちょっとだけにやけて、くちもとに手を運んだ。


すきなひとのくせは、うつるらしい。