自信なんてもう地の果てだった。
私は
廉にとってただの幼なじみで
特別可愛くもなくて
愛想もないし
背も低いし
声も可愛げないし
なんも取り柄なんかなくて
美咲ちゃんは可愛くて
女子力も高くて
ふわふわしてて守ってあげたくなるかわいさで
スタイルも良くて
声も可愛くて
あぁ比べるんじゃなかった。
自分のセールスポイントの無さえげつない…
「でもただの噂でしょ」
マコはたまに突拍子もないこと言う
火のないところに煙は立たないってことわざ知らないのかな?
噂は何か大元があるから出るんだよ…
だから、きっと
廉…も美咲ちゃんと……
「自分で確認してみたら?」
マコは追い討ちをかけるような事を言う
「いや…そんなの、出来るわけ…」
「お!ちょうど良いとこに「は?」
振り返ったら私の席の背後に、いた。
今一番会いたくなくて
けど
やっぱり会いたいヒト
「何?ちょうど良い?」
廉も噂聞いてどうせウキウキしちゃってるんでしょ、あー馬鹿らしい
美咲ちゃんみたいな可愛い女子と付き合う俺かっこいいとかどうせ思ってるんでしょ、
ほんとに、最悪な気分
「…何か用?」
うっわ、私まじで可愛くない
人生やり直したい
私が美咲ちゃんだったら、
もっと可愛く廉に甘えたり
廉から女の子扱いされたりするのかな
なんて夢物語想像してもしょうがないんだけど。
「いや、お前が俺に彼女出来たって聞いて落ち込んだかなぁーと思って顔見にきた」
…は?
え、殴っていい?
なにこいつ
何このデリカシーのない顔だけイケメンなクソ脳なし野郎
そう言いながら
私の肩に手回して顔を覗いてくる
…あぁ、幼なじみってなんでこう距離感が近いんだろう
私こんなされただけでもう心臓があり得ないほどバクバクいってるっていうのに
胸の近くまである腕に心臓の音が伝わってないかな…
だってもう
ちょっと動いたら唇が触れる距離だよ?
「意味わかんない、あっち行って」
平静を保ってなんとか絞り出すけど
私はもう顔が赤くなってないか
そればっかりで
なのにこいつときたら
ただでさえ彼女出来たって聞いただけでも本当はメンタル崩壊寸前なのに、
そんな私の気なんて知らないで
幼なじみだからっていつものノリで構ってくるし
私が好きだなんて知らないで
こうやって何の意図もなく距離感無視して近づいてくる
こんなん
私の事意識してないれっきとした証拠じゃん…
あー、もうだめだ
なんか涙出そう
「…は?泣いてんの?」
え?
泣いてる?
誰が?
慌てて顔を触れたら
もう時すでに遅しで
涙は頬を伝って口に入ってきた
うわぁ、しょっぱい
人生で流した涙で一番マズいこれ
って、何で泣くの私
みっともない
好きな相手に好きになってもらえないどころか多分女の子としてさえ見られてなくて、
ただの幼なじみだって
きっとずっとそう思われてる
そんなの今に始まったことじゃないのに、
なんでそんな奴の前で…
「仁菜、ちょっとこっち来い」
グイッ
腕を掴まれて無理やり席を立たされた
「はっ?え、何ちょっどこ行くの「いいから」
えっえっえっ
何で腕引っ張られてるの私
どういう展開?
あれ?何だっけ何してたっけ
訳もわからず廉に引っ張られたまま
もうすぐ教室のドアってとこで
ふいに慌てて振り返ったら
マコが口パクで『ガンバレ』って言ってた
なにを頑張るの今更…
というかどこに行く気?