「次はカナかもね」

若菜が言う。

「なにがー?」

私は白い線の上を歩く。
あ、はみ出た。

「麻木蓮と付き合うの」

あ、またはみ出た。
若菜が変なこと言うから。

「おい、今私、白い線の上歩いてんの。邪魔しないで。」
「なにくだんないことしてんの。」

白い線の上を辿りながらつい口から溢れる。

「麻木蓮かー」

彼女と歩いてるところ見た直後に、そんなこと考えられるわけがない。

「顔立ちがキレイ過ぎるんだよね。」

私の言葉に奈穂が「なにそれ」と返す。
いつのまにか奈穂も若菜も白い線の上を辿る。

「いやー、あの顔面と何話すの?話すことなくない?」

「意味わかんない」と若菜。

「緊張するってこと?」と奈穂。

「緊張ー・・・緊張っていうか、話盛り上がらなそう」
「今ごろどんな会話してるんだろうね、あの二人」
「イチャイチャしてんじゃないの」

いつのまにか白い線に夢中になってる。

今は恋愛とかする気にならないなー。
高2の春だけど。

冬に他校の束縛男と付き合って以来、誰とも付き合ってない。

「いい男っていないよね」
「先輩も卒業しちゃったし」

バスケ部の先輩が青空に描かれるようだ。
まじでかっこよかった。

「でもみんな彼女いたよね」

奈穂の声で現実に引き戻される。

「いるよねーいい男には彼女がいるよねー」

三人でため息をつく。

「あーいい男いないかなー」

若菜が青空を仰いだ。

「気持ちいーーー」

私が背伸びする。
べつにこんな毎日でも全然いい。
男なんて、いなくたって。