苦痛。

『ねえ、追い越そうよ』

私が提案する。

『えー、いいじゃん、べつに』
『歩くの遅いじゃん!』

行って、行って、と若菜の腕を叩く。
若菜は渋々麻木蓮の脇を通り過ぎる。
若菜の後に続いて、私も奈穂も麻木蓮を追い越した。
そして軽く早歩きでその場を去るように昇降口まで向かった。

「なんでー、せっかく面白かったのに」

若菜が口を尖らせる。

「別に他人様の恋愛見てても面白くないし」
「今一番話題の二人じゃん」
「でもどうせすぐに別れるでしょー」
「明日とか明後日とか」

駅までダラダラと喋りながら向かう。
まだ少し寒さも残る。
やっと春になったばかりの空だ。

高2の春。
なんだかしけてんなー。