誰もいない図書室。

静かに空調の音だけが響き渡る昼休み。

私は麻木蓮とキスをした。


唇が静かに離れる。

え?

ものすごく早く脈打つ心臓。
耳が熱くなる。

信じられない。

私は咄嗟に麻木蓮の隣を歩いていた1年女子の顔を思い出す。

「いや・・・彼女・・・!彼女いるじゃん・・・!」

麻木蓮は「?」という顔をした後、思い出したように「ああ」と答えた。

「別れたよ、すぐに。」

絶句。

「先週の月曜に付き合って木曜に別れたかな。」

何その早さ。
別れるの早すぎだろ。

「あの時さ、後ろの会話全部丸聞こえだったよ」

麻木蓮はいたずらな笑顔をして立ち上がった。

「え?」
「彼女?とかなんとか。丸聞こえ。」

ああ、私は麻木蓮と1年女子の後ろを奈穂と若菜と歩いてた場面を思い出す。

そんなこと話してたか。

ボンヤリと宙を見つめてるうちに、麻木蓮は「じゃあ、鍵戻しといて」とだけ言い残して本棚の影に隠れた。

静かになる図書室。

ってか嘘でしょ。

え、なに?なんで?

こんなんで午後の授業を受けられるはずない!