しばらく時間が経つ。

「俺も漫画よもー」

突然立ち上がる麻木蓮。

「奥にあるよ」
「ほーい」

細い体がフラフラと本棚の影に隠れる。

と、すぐに奥の方から「ないよー!」と聞こえてきた。

私は面倒くさくも、「あるよー」と言いながら立ち上がって声の方に向かう。

「なーい!」

幼稚な声が返ってくる。

私もフラフラと本棚の列を進む。
麻木蓮は全然違うところを探していた。

「こっちだよ」と軽く肩を叩いて誘導する。

漫画は一番奥の下の段をズラリと占めていた。

「なんだ、ここか、気付かねえよ。」

麻木蓮がしゃがみ込む。
私も隣にしゃがむ。

「おー、ブラックジャックだ。俺これ読もうかな。」

麻木蓮はブラックジャックの1巻を手に取り、嬉しそうに私に見せてきた。

「ああ、いんじゃない?」

と私も適当に返す。本当に適当に。

そして立ち上がろうとした。

その時、ふいに腕を掴まれる。

突然下に引っ張られる感覚。

そしてそのまま麻木蓮の方に引き寄せられた。

思考回路が止まったまま、時間だけが進む。