突き当たりの図書室のドアは空いていた。

入ってすぐに新刊コーナー、大河ドラマコーナー、時事問題対策コーナーとなっている。
こんなに工夫してるのに、誰もいないという悲しさ。

図書委員会、必要だろうか。

静かに入ってカウンターの方に目をやる。

カウンターに座った麻木蓮がゆっくりこっちを見る。

「すいません、ちょっと遅れて。」

私はゴモゴモ言いながら、そそくさと奥まで行ってサザエさんを1冊適当に手に取ってからカウンターに向かう。

麻木蓮と二人並んで座る。

ふと私は疑問に思って口を開く。

「早すぎじゃない?」

麻木蓮は一瞬驚いたように私を見て、すぐに笑った。

「いや、5分前行動大事でしょ」

思わず私は笑ってしまった。

「この間の委員会に遅刻しといて、よくその口で言えるよね。」
「いやあれは・・・」

麻木蓮の言葉が止まったので、ハッとして繋いでしまった。

「彼女だ。彼女と遊んでて遅れたんだ。」
「ちがいます。すっかり委員会だって忘れたまま部活行ってたんです。」

麻木蓮が笑いながら怒る。

あれ?初会話だよな、と自分で思った。

なんだ、話せるじゃん。

私は「ふーん」と言いながら、サザエさんを開いた。

麻木蓮はスマホをいじり始める。

案の定、誰も来ない。
私たちが話すのを止めると、途端に静かになる図書室。