どう見ても、僕と同じくらいか、少し幼いくらいに見える。
大人たちが言っていた魔女が本当に彼女なら、信じられない。


「もっとお婆さんなのかと思ってた……」


思わず口にすると、彼女は微笑んだ。


「あなたたちとは時の流れが違うのよ」


そう言いながら、出口に向かう。
その背中をただ眺めていたら、彼女は振り返った。


「誰かの役に立ちたいなら、少し手伝ってくれる?」


その笑顔が、怖い。
何かの実験を、僕でするつもりなのだろうか。


「嫌なら来なくていいわ。自分で言った通り、ローは使えない子ってことになるだけだから」


わざと僕を挑発するような言葉を選んでいることは容易にわかった。
だけど、本当の役立たずになりたくなくて、僕はベッドから降りた。


「可愛い子」


彼女が頭を撫でてくるから、僕はその手から逃げる。


「……なんの実験をするの」


キッチンにコップを置きに行く彼女の背中に問いかける。


「亜人のあなたに言ってもわからないわ。黙ってここに書いてある草を森の中から採ってきてくれる?」


紐で吊るされたクリップで挟んでいた紙を渡される。


「……あ。文字は読めるわよね?」
「読めないと使えないって言われるから、ヒトが使う文字は教えられた」


わざとヒトが使う文字を強調した。