「ねえあなた、名前は?」
「……ロー」
「ローはヒトに使われるのが嫌で、ここに逃げてきたの?」


彼女の質問に、首を横に振る。


「いっぱい使われすぎて、疲れて、期待に応えられなかったことがあった。そしたら、ヒトは僕を罵った」


『亜人のくせに』
『使えない』
『役に立てないなら死んでくれないか』


その言葉の刃は、僕の心に深い傷を作った。


「それでもヒトと生きたくて、僕は頑張った。また認めてもらえるようにって、必死だった。でも……ダメだった」


だけど、一度ついてしまった傷は誰にも癒されず、えぐられ続けていたせいで、僕は限界を迎えた。


使えない僕がどれだけ頑張っても、また認められることはない、と。


「……僕は、なにもできない自分が嫌いだ」


すると、割と深刻な話をしていたはずなのに、彼女は吹き出すように笑いだした。


「私からすれば、ヒトも亜人もなにもできないに等しいわ」


彼女が言っている意味がわからなくて、反応に困る。
そんな僕を見て、彼女は不敵な笑みを浮かべた。


「私はニーナ。ヒトが恐れている魔女よ」


それを聞いて、僕はもう一度彼女を見る。