一体誰に告白するんだろう・・・?
 「あれ男なの・・・?」「ちょっと可愛くない?」「あんな生徒見たことねーぞ?」
 体育館内の観客もざわざわ。
 その好奇の視線は、全て歩夢くんに向けられている。
 「ぼ、僕の好きな人は・・・」
 ごくり。
 場内は静かになる。
 「1年B組の柳井真紘さんです」
 「え!?私!?」
 大声で反応したせいでバッと観客は一斉にこちらを向く。
 「あのとき助けてもらってから、ずっと好きでした!僕と、付き合ってください!」
 ・・・あのときって、中学生のときだよね。
 「おぉっと!?ある意味美男美女のカップル爆誕か!?柳井真紘さん、壇上にて答えを聞かせてください!」
 観客全ての視線を受けたまま私は舞台のほうへ歩く。
 え、どうしよう。
 もちろん断る一択なんだけど、どう断ろう。
 予想外の展開に私の頭はプチパニック状態。
 他の生徒たちは「でも、お似合いじゃね?」「真紘くん、やだぁ!」なんて勝手のことを言っている。
 そんな中、私は壇上に上がった。
 「歩夢くん・・・」
 「真紘さん、勝手なことしてごめんなさい」
 「・・・・・・」
 他の誰にも聞かれないよう小声で会話する。
 「柳井真紘さん!早速、答えを聞いても良いですか!?」
 司会の人が、私の口元にマイクを寄せる。
 「・・・私は」
 「「「「キャーーーーーーーー!!!!」」」」
 意を決して答えようとしたとき、それを上回る声量の黄色い歓声が響いて私の答えは途中で止められた。
 何だよ・・・。
 ・・・えっ。
 私は、壇上に登ってきた一人の生徒を見て硬直した。
 「悪いけど、こいつ、俺のだから」
 「悠理・・・!?」
 「「「「ギャーーーーーーーー!!!!」」」」
 今度は体育館内に悲鳴が響き渡る。
 「真紘」
 「え、ちょっと悠理、待っ・・・!」
 「いきなり乱入の1年C組、瀬戸悠理!浴衣で現れ、柳井さんを連れて逃走です!先ほどの『俺のだから』とは、いったいどういう意味だ!?」
 そんな進行の言葉も無視して、私たちは体育館を後にした。

 ―――ガラッ。
 空き教室の一つに、私たちは入った。
 「ねえちょっと悠理。どういうつもりなの」
 「・・・・・・」
 悠理からの返事はない。
 「悠理、何か言ったら・・・」
 そこで、私の言葉は消えた。
 いや、正確には消された。
 「んっ・・・!?」
 悠理は強引に、自分の口によって私の口を塞いだ。